一般歯科(保険診療)

一般歯科(主に保険診療)

むし歯

むし歯

 学校歯科健診の現場では、褐色の溝等が認められても、エナメル質の欠損がない場合は、う蝕が進行しないように食生活指導や清掃指導を行い、一定期間後(3ヶ月~6ヶ月)に経過観察しています。右図(日本学校歯科医会HPから引用)は、左上から7歳、8歳、9歳、10歳、11歳の経年的変化で、溝が浅く、着色も濃くなって典型的な安定した様子が分かります。
 当歯科医院では、止むを得ず歯を削るようなむし歯の際は、う蝕検知液(むし菌に感染した取り除くべき部分が赤く染まる薬液)を繰り返し使用しながら、細いバーによる切削、化学薬品などを用いて、むし歯菌が進入している歯の部分(感染象牙質)を除去することによって、歯の神経(歯髄)を保存し、象牙質を残すような最小の侵襲による治療(Preservative Dentistry)を行っています。
 ところで、新しいむし歯を発見したときなど、歯科医院ではいきなり削って詰めないで、歯の神経の炎症による痛みを抑えるための薬を入れ、しばらく様子を見ることがあります。
 その薬の痛み止め・消毒効果により水やお湯にしみ無くなり、痛みが消え、むし歯の穴もふさがるため、一時的に不満な点が解消されるので、この段階で、通院を中断して、そのまま放置される患者さんがいます。しかし、この処置はあくまで仮の詰め物による処置のため、感染象牙質をきちんと取っていないことが多く、詰め物自体も次第に崩壊し、時間の経過と共に、むし歯が更に進行してしまいます。また、歯がしみたり、痛くなった時は、身体が危険信号を発しているわけですから、早期に受診され、「あの時、早くちゃんと治しておけば、歯の神経を取らなくて済んだのに…」なんて後悔することのないようにむし歯が治るまで治療を続けましょう。
 なお、むし歯が歯の神経の近くまで、進入している場合、直ぐには歯の神経をとる(抜随)ことをしないで、歯の再石灰化を促す薬を軟化象牙質(感染象牙質)の除去が行われた歯質の上に覆い、暫間充填(仮の詰めものですが、前述のものとは目的が違います)をして、数ヶ月から1年近く、様子を見ることもあります。
 保険外治療となりますが、深いカリエス(むし歯)で、歯髄炎はないが感染象牙質を削除すれば抜髄は必至のケースでも、軟化象牙質(感染象牙質)を完全除去せず、充填することが可能であるといわれている3Mix法Doc's Best Cement法があります。

※当院では、詰め物、被せものまでが自費診療となってしまうので、対費用効果を考えると余りお勧めできません。(現在は取り扱い休止中)

よ防さん

 また、2007年に日本で薬事法の承認を受けた、むし歯の部分だけを次亜塩素酸ナトリウムと、3種類のアミノ酸を混ぜた薬で溶かして、専用器具でかき取るという「カリソルブ」というスウェーデン生まれの薬も、象牙質のむし歯部分の軟化象牙質をバーで削らなくても効果があるので、歯髄に達していない軽度のむし歯(C2)に向いています。 
*「よ防さん」は日本歯科医師会のPRキャラクターです。

むし歯になりやすい&なりにくいおやつと飲物

むし歯になりやすいおやつ(粘っこい物、歯にくっつくおやつ)

① 飴類のおやつ ≫≫一番危ないお菓子 
飴類、特にチュッパチャプス、ハイチュウ、グミなどを毎日食べたり、長い時間に渡って食べると必ずむし歯になります。だから、こまめなブラッシングが必要!!
・あめ
・キャラメル
・アイスキャンディー
・ソフトキャンディー
・グミ
・チョコレート
・チョコヌガー
・ガム(砂糖入り) 

② 粉物のおやつ ≫≫歯に粉物が一杯くっつき固まりとなって噛む面の溝に深くはまり込んで取れなくなってむし歯を作りますので、こういう種類のお菓子を食べた後は、ていねいな歯磨きをマメにしましょう!!
・ビスケット菓子(小麦を原料とする)
・米菓(おかき、おせんべい)
・スナック菓子(ポテトチップス、ポップコーン、コーンパフ、スナックラーメンなど)
・クッキー
・せんべい
・菓子パン
・ケーキ 

③ 炭酸飲料 ≫≫水分補給のためにジュースを飲み続けると、虫歯になりやすいだけでなく、空腹感がないので食事もしっかり食べられなくなります。コーラのペットボトルのがぶ飲みを続けて、「糖尿病」になった中学生もいます。寝る前に飲む飲み物では、特にお砂糖が入った炭酸飲料は危険ですので注意しましょう。その代わりに、緑茶ウーロン茶、又は砂糖がほとんど入っていないダイエット飲料にしましょう。
・炭酸飲料(コーラ)
・乳酸飲料
・スポーツドリンク(ポカリスェットやアクエリアスなど)
・100%果汁ジュース 

むし歯になりにくいおやつ(溶ける物、歯にくっつかないおやつ・カミカミおやつ)

・玄米パン
・おにぎり
・野菜スティック
・蒸かしたイモ
・トウモロコシ
・くだもの(リンゴ、ミカン、バナナ)
・硬焼きおせんべい
・にぼし
・するめ
・牛乳
・お茶
・ダイエット飲料
・くだものを搾った果汁
・ガム(キシリトール入り)
・グミ(顎をきたえる)
・板チョコレート
・和菓子
・プリン
・ゼリー
・アイスクリーム、ソフトクリーム
・シュークリーム
・ケーキ 

おやつを食べるときに気をつけること(虫歯にならない食べ方と飲み方) 

① ダラダラ食べやダラダラ飲みに注意しましょう!!
唾液には、酸によって溶けた(脱灰)歯の表面を修復する働き(再石灰化)があるので、口の中に何もない時間があると唾液が歯を修復してくれますが、お菓子やジュースをダラダラ食べや飲みをすると、口の中が汚れていつも酸性(ph5.5以下)になり、歯を修復することができなくなります。  また、唾液には食べかすを洗い流したり、酸を中和したりする働きがあります。唾液の分泌量を増やすように、よくかんで食べる食生活を心掛けましょう。 

② 1回に食べる量を決めましょう!!
おやつやお菓子を開けた袋ごと食べたりするのは、ダラダラ食いのもと。1回分のおやつの量を決めてから、お菓子小皿にのせて食べましょう。また、ジュース類をビン、パック、ペットボトルから、いきなり飲むと飲む量が判らなくなるので、飲み物はコップに入れて飲みましょう。

③ おやつの組み合わせを考えましょう!!
チョコレートと乳酸飲料、ドーナツとジュースというように、甘いお菓子プラス甘い飲み物というのは、歯のためには最悪。しかし、1日に同じ量のジュース類を毎日飲んでいるような場合では、むし歯になるリスクを大きく軽減させるために、おやつと食事の間にジュースを飲んでいる習慣を、ジュースはおやつと一緒に飲むようにして、それ以外の水分を麦茶、緑茶に変えましょう。 


無痛的治療・無麻酔治療

無痛治療・無麻酔治療

 診療中の痛みは麻酔をすれば、基本的になくなりますが、麻酔自体が苦手な方もいらっしゃいますので、当歯科医院では、麻酔の痛みの軽減にも、注意をはらっています。
 麻酔時の刺入点(浸麻針を刺す部位)に、表面麻酔薬を塗布することにより、歯肉に刺さる時の痛みを緩和させます。いわゆる、表面麻酔薬は麻酔のための麻酔です。
小児の診療時や下顎の奥歯のような浸潤麻酔が効きにくい場合は、歯根膜麻酔用注射器(シトジェクト)を使用します。また、麻酔液を体温の温度と同じくらいに保つことによって、麻酔をする時に、麻酔液が入る時の痛みを緩和することができますので、カートリッジウォーマーにより、麻酔時に使う麻酔液の入っているカートリッジを温めておきます。
 さらに、麻酔時には、カートリッジ1本分の麻酔液を一気に注入するのではなく、半分だけ使用して、残りは、麻酔効果が不十分の時のみ使用するように心がけています。
 
 針が無い麻酔器(無針麻酔器シリジェット)を使用されている歯科医院も増えており、多少『パチン』と大きな音がしますが、痛みがほとんど無く、一瞬で麻酔処置が終わります。
 最近は、診療室の空気汚染が問題視されていることからも、当院では、ほとんど行うケースは稀になりましたが、無痛治療の実践として、治療時の麻酔に、治療中の不安感や緊張感を大幅に軽減することができる笑気吸入鎮静器を使用する場合があります。
 なお、ほかに全身的な疾患をお持ちの方など、精神的・身体的刺激を避けたい場合やお子様、障害者などの歯科治療には特に有効な静脈内麻酔、全身麻酔を必要とする場合は、医療連携先病院のリラックス外来を紹介しております。
 また、技術の進歩により麻酔をしなくても良い治療法も出てきました。レーザーによる治療で、痛みを減らすばかりでなく、同時に止血等の処置まで可能とされています。
 無麻酔治療については、「夢のセメント?」と言われているドックスベストセメント(Doc's Best Cement)を使用されている先生方がおります。
 通法による治療は「むし歯菌で汚染された部分(軟化象牙質)を完全に除去」することが基本です。軟化象牙質(感染象牙質)を完全に除去するのに痛みがある場合は麻酔がどうしても不可欠になります。軟化象牙質を完全に除去して歯の神経(歯髄)までむし歯が達していたら「神経を全部取るか一部取るか」という治療(抜随か生活歯髄切断法)になることがほとんどです。神経を取った歯でも後に、痛んだり、根の先に膿みが貯まったりして再治療が必要に場合がありますし、枯れ木が折れやすいように、歯そのものが破折する危険性が高くなります。
 ところが、このドックスベストセメントの力により、軟化象牙質は無菌化され、石灰化して治癒するので、無麻酔下でエナメル質だけを軽く除去し、軟化象牙質をドックスベストセメントで覆うだけで、最終充填をすることができるそうです。しかし、保険外治療のため治療費が高額になり、適応症とされる頻度もごく稀と思います。
 でき得るならば、歯の神経は取らずに残しておきたいという同様な目的で、日本で生まれた治療法に、軟化象牙質の上を3種類の抗生物質で覆う3Mix法があります。萌出直後の永久歯の急性う蝕歯に応用した当歯科医院での症例で10数年以上の経過例のうち、再充填したケースはありましたが、いずれの症例もその目的は達していました。

 また、むし歯の部分だけを次亜塩素酸ナトリウムと、3種類のアミノ酸を混ぜた薬で溶かして、専用器具でかき取る「カリソルブ」というスウェーデン生まれの薬も、2007年に日本で薬事法の承認を受け、従来の回転切削器具(バー)で削る方法と違って、熱を発生せず、振動をほとんど与えないため、痛みを抑えられますが、表面のエナメル質や詰め物には作用しないので、むし歯が内部で広がっている場合などは、混合溶液を感染象牙質までに到達させるために、歯質の一部をバーで削る場合もあります。歯髄(歯の神経)に達していない象牙質のむし歯すなわち軽度(C2)のむし歯に向いていますが、下記に示す患者の治療には特に有用だと思われます。

1.小児・高齢患者
2.歯科恐怖症・痛みに敏感な患者
3.心臓の病気等の全身疾患で局所麻酔の使用が禁忌の患者
4.在宅診療の患者

 しかし、処置後のつめるものまで、何れも自費診療となるため、1本当たりの治療費は、ドックスベストセメントは、セメントを使用するだけで14,000円程度、カリソルブは、詰め物まで含めて、1万円から2万円程度かかるので、上記のような特殊なケース以外は、治療に要する時間との対費用効果を考えると、余り、お勧めできません。
※当院では、詰め物、被せものまでが自費診療となってしまうので、対費用効果を考えると余りお勧めできません。(現在は取り扱い休止中)


予防歯科と定期健診

歯の心得

 当歯科医院では、これからの歯科は、むし歯や歯周病(歯ぐき、歯の根の表面にあるセメント質、顎の骨のうち歯を支えている部分、歯の根と顎の骨を連結している膜など、歯の周りにある組織に起こる病気の総称)で悪くなった部分を治療するのではなく、健康な状態を維持することが重要であると考えています。
 予防歯科では、口腔内のチェックやむし歯、歯周病の健康診断と定期なクリーニングを行います。その他、歯磨きや食生活の指導、唾液や噛み合わせの検査なども大切な基本検査項目です。
 むし歯を未然に防ぐことは、歯だけではなく、全身の健康にも役立ち、あらゆる病気から患者さんご自身を守ります。
 定期的なPMTCProfessional Mechanical Tooth Cleaning)すなわち特殊な医療器機やフッ素使って行う歯科医師・歯科衛生士による歯科医院で行う歯のクリーニングでむし歯、歯周病をゼロにしましょう。
 歯および歯周ポケット内にあるバイオフィルム(細菌の塊)をPMTCは破壊していきます。ご自分ではできない歯の隅々まで、きれいにクリーニングすることで、細菌の活動を数ヶ月間停止させることにより、①歯周病予防。②歯質強化によるむし歯予防。③歯に付着した色素着色の除去。④口臭予防等ができます。
 但し、PMTCでは歯石を除去できませんので、基本的に歯周病治療として行うのではなく、歯周病予防、むし歯または歯周病の治療が終わった人を対象にした自由治療となります。
 治療終了後、当歯科医院では、定期健診のために多くの医院が一律にされているようなダイレクトメール、お手紙は差し上げてはいません(ご希望の患者さんには、健診日の近くになると電話連絡はしています)が、一生ご自身の歯で楽しくお食事をしていただくために、また、残った歯を大切にするために、定期健診の趣旨に同意、自ら希望された方に、定期的なチェック(定期健診)をおすすめしています。(当医院では、長い治療期間を要した患者さんの殆どの方が、健診を自ら受けられています。)
 歯科医院に通って治療をするためには、多くの時間を必要し、また、歯の治療は楽なものではありませんので、治療が一段落したときに、「これで当分は医者には行かなくても大丈夫」と考え、そのまま、数年間、何のトラブルもなく過ごせる方もおられますが、歯科医院からすっかり足が遠のいていると、患者さんご自身が気がつかないうちにむし歯等が進行もしくは再発して、「歯の神経をとる」、「歯を抜く」など手遅れになってしまうことが多々あります。
 定期的に来院されることにより、むし歯、歯周病の早期発見・早期治療することが可能です。むし歯の治療をされた方については、 むし歯は、象牙質(歯のいちばん外側にあるエナメル質の内側にあります)まで達してしまうと、自然治癒することはなく、進行していきますので、早めに発見できれば、大部分のケースは、むし歯の部分のみ取り除いて、詰めものをし、1~2回の治療で治ります。しかし、むし歯が進行すればするほど、治療に要する通院回数と、詰めるだけでは済まなくなり、歯全体に被せるようになり、診療費が増加していきます。
 特にお子様については、乳歯、生えてきたばかりの幼若な永久歯は、大人の歯と比べてむし歯になりやすく、進行が早いため、3ヶ月ごとにチェックをして、予防シーラントの脱落、再発を含めたむし歯の早期発見が大切になります。
 小児の定期健診時には、お子様の歯ブラシの使い方、お母さんによる仕上げ磨きの方法やむし歯になりにくくするためのおやつや飲み物のとり方などの歯科相談・再指導をいたします。さらに、効果があると思われるケースには、ご希望に応じて、フッ素塗布をいたします。(フッ素予防塗布は自費になります。)

 軽度でも歯周病にかかっている方、 歯周病の進行を防ぎたい方についても、自発的に、定期的に来院していただければ、患者さんご自身のケアが苦手な部分があれば、効果的な汚れのとり方をご指導したり、歯科医院でのプロによるクリーニング(歯石除去やPMTC)を行い、歯周病の進行をおさえる手助けすることができます。
 また、入れ歯(義歯)を使われている方についても、入れ歯を支えているバネの掛かっている歯がむし歯になっていないかどうか、さらに、入れ歯の適合、お手入れの状態等をチェックします。お口の中にすっかり馴染んで、使い慣れた入れ歯でも、ご自身の気付かないうちに、人工歯(入れ歯の歯の部分)が磨り減ったり、入れ歯の内面がぴったり合わなくなって、顎の歯肉との間にものがつまっていたり、また、噛み合わせが合わなくなっていることがあります。そのまま放置すると、残りの歯やあごの部分に思わぬ負担をかけてしまっていることがありますので、定期的なチェックが必要不可欠となります。 

乳歯の役割と先天性異常について

◆乳歯の役割について
乳歯はなぜ必要なのでしょか?
乳歯は、生後6か月頃から生え始め、3歳位までに上下あわせて20本生えそろいます。 乳歯を使う期間は短いのですが、その間に乳歯が果たす役割は、大変、重要です。
①ものを噛む
歯があることで、食べ物を噛み切ったり、引き裂いたり、噛み砕く事が出来ます。そうすることで顔や顎の発育を助けたり、顔の形を整える働きをします。
【噛み癖の影響】
いろいろなものが食べられる事で、体も大きく、丈夫になっていきます。
②発音
乳歯があることで、正しい発音を覚えるようになります。
③永久歯が正しく生えるための案内役→乳歯には永久歯を正しい位置に誘導する役目もあります。
・乳歯をむし歯にしたまま放置すると、乳歯の根の先にある永久歯も感染しますので、むし歯の状態ではえてきます。
(乳歯がはえ始める頃には永久歯は育ち始めています。)
・乳歯を早めに抜いてしまうと歯並びやかみ合わせが悪くなります。(ケースにより歯が寄らないように装置を入れることが必要とります。)
【特に6歳臼歯の前の第二小乳臼歯】
※『いずれ、はえ代わるから痛みがなければ子供の虫歯は放っておいても良い』とおっしゃる大人の方(特に、お爺ちゃん、お婆ちゃん)もいらっしゃいますが、そんなことはありません!
子供の成長、むし歯にならない強い永久歯をつくるために、乳歯をきちんと治療しておくことは大切なことです。

≪参考≫幼児における歯・口の健康づくりの課題(文部科学省 H23.3 )
※ 近年、幼児虐待などの痛ましい社会的問題が出現しているが、歯・口の異常所見によって発見されることもあります。
1.重点
 園児は歯や口の健康づくりに関心を持ち、基本的習慣、すなわち、「歯・口の清掃や、間食の規則性を守り、好き嫌い無く、良く咬んで食べること」、を身に付けることができる。
・良く噛んで食べる習慣付け
・好き嫌いをつくらない
・食事と間食の規則的な習慣付け
・乳歯のむし歯予防と管理 【歯科定期健康診断】
・歯・口の清掃の開始と習慣化
・歯・口の外傷を予防する環境づくり
2.内容
 (1)自分の歯や口の理解
 ア 自分の歯の様子を鏡でみることができる。
 (2)歯と口の清掃
 ア 嫌がらずに保護者と歯みがきができる。
 イ 食後に自分でも歯みがきをしようとする。
 ウ 食べた後にブクブクうがいができる。
 (3)基本的な食生活
 ア おやつは規則的にとることができる。
 イ 好き嫌いなく、何でも食べることができる。
 ウ 食べ方のマナーを知るとともにしっかりと咀嚼し、飲み込むことができる。

◆乳幼児期に歯や口の中に見受けられる異常

上皮真珠

①《上皮真珠》 

乳歯が生える前、あるいは生えかけの頃、乳犬歯や乳臼歯あたりの歯ぐきに白上皮真珠い塊ができることがあります。これは上皮真珠といい、脂肪の塊のようなもので、歯ではありませんが、自然に消えていくので心配することはありません。特に何か処置をすることもありません。 痛みもありませんし、なんら害を及ぼすこともありません。 写真の白いふくらみは、赤ちゃんの右上乳犬歯が生えてくる場所に相当する位置です。


歯の奇形

②《歯の奇形》 

歯の奇形左の写真は乳前歯の奇形です。T字型をした歯が生えてきているのですが、お母さん方からは、歯の裏からもう一本歯が出てきた、どうすればいいでしょうかと相談を受けます。この角(ツノ)のように尖った部分と、下の前歯のあたり具合で歯がかけると、その歯が腐ってきます。歯が欠けないように処置する必要があることもあります。できるだけ早めに、かかりつけ歯科医院の先生に診てもらいましょう。  

 

エナメル形成不全

③《萌出順序の異常》 

「歯の生えて来る萌出順序の異常順番がおかしい」と言って心配される方がけっこういます。 

「真ん中の歯が生えずに、横から出てきたがどうすればいいでしょうか」、と言う質問を受けることもあります。多くの場合、しばらく待っていれば生えてくるものです。歯ぐきに膨らみがあれば、まず大丈夫です。この写真のお子さんも、真ん中の歯が遅れて生えてきたケースです。しかし、時には歯が先天的に無いこともあります。 


 ④《エナメル形成不全》

乳中切歯の表面が少し黄色くなっている左の写真は、エナメル質が正常出来上がらなかったものです。妊娠中のお母さんの体調が悪くてなることもあるようですが、原因ははっきりしません。白い正常な部分のエナメル質と比べると、歯の質が弱いのでむし歯になりやすいと言えますが、右は、食生活に注意し、手入れをしっかりした 1年3ヵ月後の写真です。

エナメル形成不全
エナメル形成不全


癒合歯

⑤《癒合歯》 

癒合歯(乳中・乳側切歯)左の写真は、乳中切歯と乳側切歯が二本くっついたケースです。 多くの場合、すぐに処置をせず、永久歯との交換まで経過を観察します。 
しかし、歯のくっついている境目のところはエナメル質が薄いので、むし歯になりやすいため注意が必要です。 


癒合歯

左の写真は、右下の乳中切歯と乳側切歯が癒合しているのですが、見た目には一本の大き目の歯に見えます。 永久歯との交換の時期には、生え変わる永久歯が顎の中でどのようになっているのか、レントゲンを撮ってきちんと検査する必要があります。 
それは、永久歯もくっついている場合、後続の永久歯がない場合(先天性欠如歯)などが考えられるためです。


上唇小帯付着異常

⑥《上唇小帯付着異常》 

歯ぐきから上唇につながる襞のことを、上唇小帯と言います。
この写真のように、歯のすぐ際までくっ付いていることがあります。このような場合、歯と歯の間に隙間が出来るので、早めに切除すべきと言う意見がありますが、私は永久歯の歯並びに影響するかどうか判断しなければいけない、6~7歳まで待ってもいいのではないかと思います。ただし、ていねいにブラッシングしなければ、すぐにむし歯になってしまいます。

歯を磨く時の注意

<歯を磨く時の注意> 

 上辰小帯異常の歯みがき写真の緑の矢印の部分に、歯ブラシがあたらないようにすることが大切です。ココにあたると痛くて歯みがきを嫌がります。青い矢印の個所に汚れがたまりやすいので、ココに注意しながら右と左の歯を、それぞれ1本づつ別々に磨くようにしましょう。二本の歯をまとめて磨こうとしてはいけません。歯ブラシの動きは、この場合横に動かすより、上から斜め下に動かすと良いでしょう。 

 

先天性欠損

⑦《先天性欠損》 

 時には、歯の数が不足していることもあります。歯の芽そのものが無く、先天性欠損といい、写真のお子さんは、下の前歯が2本足りません。糸切り歯から糸切り歯まで全部で6本あるはずの歯の数が4本しかありません(乳側切歯が欠損) 。左右対称に不足するケース、片方だけが不足するケースなど様々ですが、このような場合、生えてくる永久歯がないことも(先天性欠如歯)よくありますので、レントゲン検査を受けることが大切です。

 

 


歯周治療と歯周疾患予防的処置

歯周治療と歯周疾患予防的処置

 日本人の働き盛りの中高年者の8割は、多かれ少なかれ歯ぐきの問題を抱えています。しかし、実際、歯周病の治療や定期健診を受けている人、自覚のある人が少ないことには驚きます。歯周病は歯に付着したプラーク(歯垢)や歯石が歯肉縁下に及び、細菌による炎症を引き起こして、歯を支えている歯槽骨を溶かしてしまう病気です。ところがこの過程では、むし歯のような激しい痛みや腫れ等の自覚症状を伴うことが稀なため、気が付かない内に末期症状に至って、ついには、むし歯でない健康な歯が、支えを失い、グラグラしてきたり、自然に抜け落ちてしまいます。
 さらに、歯周病は、口が消化器官の一部として全身とつながっていますので、糖尿病、心臓病、呼吸器系の病気や全身の健康状態と、また、生活習慣病の1つでもあるので、日常の食生活、歯磨き習慣、喫煙等とは、互いに関連し合っています。 痛みが始まったり、歯が抜けてからでは手遅れです。日頃からの予防と早期発見・早期治療、食習慣や生活習慣を見直すことにより健康な歯と歯ぐきを維持し、自分の歯で一生噛める楽しい食生活を過ごしましょう。
 以下の項目に、一つでもあてはまるものがあれば、『歯なしで人生を台なしにしない』ためにも、すぐに歯周治療が必要かどうか歯科検診(歯周組織検査等)を受けられることをお薦めします。

 ・歯ぐきが紫赤色、もしくは赤い。歯間部が腫れている、又はブヨブヨしてる。
 ・歯磨きのブラッシングの際、歯ぐきから出血する。
 ・部分的に歯ぐきと歯が剥がれた感じがする。
 ・歯ぐきから膿が出る、または変な味がして、触った指が臭う。
 ・口臭がある。
   ・歯がグラグラしてきたり、歯と歯の間が離れてきた。
   ・以前と比較して、歯の噛み合わせが変わってきた。
 ・部分入れ歯が合わなくなってきた。
 ・糖尿病がある、もしくは以前あった。
 ・喫煙の習慣がある。

 なお、ブラッシング指導、歯石の除去などの予防的処置は一般に「初期治療」と言われています。すでに歯周病に罹ってしまった方に行う歯周治療の前処置としても行うものですが、この「初期治療」をおろそかにしては、その後のどんな歯周病治療も有効になり得ませんし、また、治療後の「歯周病の再発防止」という大切な目的も兼ねています。



歯ぎしりと知覚過敏症

歯ぎしりと知覚過敏症

 睡眠中、本人が知らずにする歯ぎしり食いしばり)は、だれにも見られます。
 ただ、ひどい場合は、歯や歯周組織の損傷ばかりか、全身にも悪影響を及ぼしますので、半年以内に2度以上、一緒に寝ている同室の人に歯ぎしりを指摘されたり、朝起きた時にあごのこわばりや疲労を感じる人は注意が必要です。
 歯ぎしりは、口腔(こうくう)異常習癖の一種で、上の歯と下の歯を擦り合わせてギリギリと音を立てるケースはよく知られていますが、そのほかに「クレチング」といって、ほとんど音を発生させずにぐっとかむ「かみしめ」や、歯と歯を触れ合わせてがたがたさせる「タッピング」も含まれます。こうした動作は、健康な人でも睡眠中に行っているという報告があります。
 一般的に、普通の人でも8時間の睡眠中に15分ほど歯ぎしりをして、歯ぎしりをする癖のある人たちは、平均40分にわたって行っており、中には1時間45分に及ぶ人もいて驚くほど歯にダメージをあたえています。
 歯ぎしりの程度を筋電図で見ると、ガムを強くかんだときの数倍から10数倍に相当するケースが、約80%を占め、こうした力が継続的に加わると、歯が擦り減ったり、歯周組織が損傷したりするのはもちろん、さまざまな症状を引き起こします。
 その代表例が知覚過敏症(虫歯になっていない歯が、冷たい水や甘いものなどを口に含んだ時、歯ブラシでふれた時に痛みとして感じる症状)です。
 前述の通り、睡眠中、無意識による夜間の歯ぎしりくいしばりは通常起きている時に食事するときの数倍、時には数十倍のもの力でこすり合わせるので、歯の表面が著しく磨耗したり、ヒビがはいったり、時にはかけることもあります。また、歯の付け根の部分がえぐれた状態(楔状欠損)になることもあります。そういう状態になると、虫歯になっていない歯でも、歯のなかには毛細血管や知覚神経が無数に存在しているため、これらが、歯ぎしりによって過度の刺激を受けると血管は充血し神経は敏感になり、ちょっとした刺激で痛みを伴い、知覚過敏となってしまいます。
 当院では、楔状欠損が進んで、食事の時、硬いものを咬んだ途端、『バッキ』と音がして、歯が水平に折れ、歯の根(歯根)だけ残ったケースがありました。
 知覚過敏の治療は軽度のものであれば、薬の塗布などの治療で治ります。中度になると、就寝中にマウスピースを装着することが必要です。前述のような歯牙破折例は、極めて稀ですが、重度になると歯の神経をとる処置が必要になりこともあります。
 その外、就寝時の歯ぎしりは、歯の周りの骨が異常に突出する外骨腫や、顎関節の雑音や痛み、耳鳴りといった局所的なものから、睡眠障害、さらには自律神経系にも影響してきます。
 その一例が、睡眠時無呼吸症候群との関連です。これは突然死の一因として問題視されている症状で、歯ぎしりの直後に睡眠時無呼吸症(sleep apnea syndrome;SAS)が頻発することを確認されています。 このような場合は、耳鼻咽喉科医に相談して下さい。nasal CPAP(nasal continuous positive airway pressure ; 鼻シーパップ,ネーザルシーパップ)装置を使用したり、下顎を前進させた状態を固定し、気道の狭窄を防ぐためにスリープスプリント(マウスピース)の作成を歯科医に依頼することもあります。
 歯ぎしりは、ストレスなどの情緒的因子と、歯の噛み合わせの悪さが大きな原因と考えられています。
 このため治療法は、(1)上半身の運動訓練などによる理学療法 (2)普段、無意識に営まれている機能を意識的に抑えるよう訓練するバイオフィードバック療法  (3)筋弛緩剤などによる薬物療法  (4)10秒間歯を最大限にかみしめた後、5秒間力を抜くといった集中行為訓練療法  (5)上下の歯が接触しないように口の中にボクシングのマウスピースのようなものを入れるスプリント療法 (6)不適合な被せものの交換を含めた噛み合わせを調整する咬合治療療法などが行われています。
 さらに、パソコンのキーボード操作時、物事に集中しているときにも、くいしばりは見られますので、家庭では目につくところに「歯をかみしめたら、あごの力を抜いてリラックスする」などと書いたポストイット等(付箋メモ)を張っておくような自己暗示療法も大切です。
 また、大人と同じように子供も歯ぎしりがみられます。子供の歯ぎしりの要因の一つには、成長反応の一種であるといわれています。子供の歯の成長のために、歯ぎしりは必要なことで、赤ちゃんや幼児などの小さい子供は、歯ぎしりによって上あごを鍛えているのです。赤ちゃんや幼児に限らずとも、10歳以下の子供の場合も、乳歯と永久歯の生え変わりの時期に、歯ぎしりをすることが多くみられ、やがてしなくなりますが、子供がある程度の年齢になっても、頻繁に歯ぎしりをするようだと大人と同様、ストレスやむし歯が要因であることも考えられるので、日頃の注意が必要です。



顎関節症

顎関節症

【顎関節症とは?】
 顎関節症(がくかんせつしょう)とは、顎関節部や咀嚼筋等の疼痛、関節音、開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする慢性疾患群の総括的診断名であり、その病態には咀嚼筋障害、関節包・靭帯障害、関節円板障害、変形性関節症などが含まれています。日本では「美人病」の俗称があります。

【顎関節症の症状】
 一般に、①顎運動障害、②顎関節痛、③関節雑音(いわゆるこれらを顎関節症の主要3症状と呼ぶ)が、単独もしくは複数合併して発現します。疼痛は主に顎運動時に生じます。

①「口が思うように開かない」(顎運動障害すなわち開口障害)
 人差指、中指、薬指を揃え(約40mm)、縦方向で口に入れてみましょう。入らない、あるいは痛みを伴う場合、開口障害が疑われます。関節円板の転位などしばしば見受けられますが、何と言っても開口障害の一番の原因は、咀嚼筋の緊張。特に、歯ぎしり食いしばりの癖がある方は要注意です。

②「口を開けると痛い」(顎関節痛や咀嚼筋の疼痛) 
 顎関節症では、主に、開口時や咬合時などの顎運動時に生じ、静止時には痛みを感じません。顎関節症の原因が咀嚼筋の過緊張による場合、運動時痛の他、圧痛も生じます。顎運動時痛や圧痛は、深部から起こることが多く、どこが痛いかはっきり特定できないこともよくあります。

③「口を開けると音がする」(関節雑音)
 口を開け閉めするとき、顎と下顎の間でクッションの役目を果している関節円板が復位する時の「クリック」音。関節円板がスムーズに移動しない場合、「カクン」という弾撥音である「クリッキング」音と、稀に「ゴリゴリ」、「ジャリジャリ」、「ミシミシ」という低い音の「クレピタス」音という「雑音」が聞こえることがあります。

 その他にも、耳の痛み、耳閉感、難聴、めまい、眼精疲労といった眼や耳の症状、頭痛や首、肩のこり等の症状を呈する場合もあります。

【顎関節症の原因】
 顎関節症は異常な開閉口運動や、ブラキシズムなどの顎に加わる異常外力、補綴物異常など多様な原因による咬合異常や筋緊張に起因するといわれています。また、大きく開口するあくび、笑いといった常日頃の何気ない動作や、歌唱、寝違え、頬杖など生活習慣や、仕事の変化と肉体的心理的ストレスの相乗作用によって、原因となる状態を惹起し、症状が出現する場合もあるなど、複合的な要因によって発症することが多いとされています。

【顎関節症の分類】
 病変が咀嚼筋障害による「筋性」と、顎関節(下顎窩、関節円板、下顎頭、関節包)障害による「関節性」の二つに大別される。日本において顎関節症の多様な病態に対応するため、日本顎関節学会は、次のようにI~V型に分類を行い、広く臨床に使用されています。

・I型:咀嚼筋障害を主徴候とし、その病理は筋緊張と筋スパズム、筋炎である。顎関節部の運動痛と運動障害を僅かに生じることがあり、筋痛を強く生ずる。
・II型:関節包関節靭帯円板後部組織の慢性外傷性病変を主徴候とし、顎関節部の運動痛と圧痛を強く生じ、関節雑音を生ずる。筋痛は弱い。関節鏡下で病変を認める。
・III型:関節円板の転位や変性、穿孔、線維化を主徴候とする。「クリッキング」音と呼ばれる関節雑音が顕著である。筋痛はなく、顎関節部の疼痛は弱い。
・III型a:復位性関節円板転位:関節円板の位置関係が復位する時に関節雑音(「クリック」音)が確認できる。
・III型b:非復位性関節円板転位:関節円板の位置が復位しない。ひっかかりのための開口障害や顎関節の疼痛がおこる。
・IV型:変形性関節症。関節軟骨の破壊、下顎窩や下顎頭の骨吸収や変性・添加、関節円板や滑膜の変形異常などの退行性病変を主徴候とし、「クレピタス」音と呼ばれる関節雑音が顕著である。X線所見上も大きな異常を認めるようになる。
・V型:上記のI~IV型のいずれにも該当しないが、顎関節領域に異常症状を訴える、心身医学的な要素を含むもの。

【顎関節症の治療法】
 顎関節症の治療は原則として、原因や誘因の除去する治療法が主となり、顎の安静や咬合異常の整復を目的とした様々な治療法が存在します。潜行型の場合、薬物療法や、原因となる噛み合せの調整のためスプリントや矯正を行います。
1)スプリント療法:スプリント療法は一般的ですが、顆頭の位置を把握した上で入れなければ危険です。
2)薬物療法:顎運動時痛や圧痛は、深部から起こることが多く、どこが痛いかはっきり特定できない場合。
3)理学療法:当医院では、顎関節痛や咀嚼筋の疼痛の緩和のために、超高輝度近赤外線LED照射装置である最新の先端理学美容機器マシンWAVEducer(ウェーブデューサ)を使用したオーラル及び顎・顔面のリハビリテーションシステムを導入しました。現在はILUXI(アイラクシー)を使用中です。
4)外科的療法:関節腔内を洗浄することや、内視鏡下での外科的手術を行なうこともあります。
 なお、予後については、多くの場合、顎関節症における臨床症状は時間の経過により緩解ないし消失に向かいますが、10~15%の症例では臨床病状の遷延化ないし悪化をきたします。この少数だが重要な患者群についての研究が、今後の課題とされています。
(主にウィキペディア(Wikipedia)から引用・追加)



口臭症の治療

口臭症の治療

 近年、社会的に清潔志向への関心が高まるにつれて、口臭を主訴とする患者が増加しています。口臭はその原因に関わらず口腔を通して排出される他覚的に不快な臭い(悪臭)の総称とされ、その原因として次に示すものが考えられます。

【口臭の原因】
1 )口腔内疾患
 歯原性疾患(歯周病,多発性齲蝕症)口腔乾燥症(薬剤性、シェーグレン症候群、発熱性疾患)不潔な義歯、食餌(食物残渣)、舌苔、悪性腫瘍

2 )鼻咽腔疾患
 慢性副鼻腔炎、慢性扁桃炎、悪性腫瘍

3 )上部消化器疾患
 食道憩室、食道狭窄、慢性胃拡張症、幽門狭窄、胃酸分泌障害、悪性腫瘍

4 )呼吸器疾患
 気管支炎、肺膿瘍、肺結核、悪性腫瘍

5 )代謝性臭気性
 慢性肝炎、肝硬変(アミノ酸)、糖尿病(アセトン臭)

6 )その他
 食習慣、生理的口臭

 他覚的に口臭が認められる患者の80%以上は口腔内に原因で、そのほとんどは、歯周病やう歯、食事の食べかす、プラーク(歯垢)、歯石、舌苔による口腔内の汚染、不潔な義歯による口腔内自浄作用の低下とされています。これらの感染は歯牙、歯周組織に生じた炎症性の反応の結果、血球成分、上皮細胞などの含硫アミノ酸に脱アミノ反応がおこり揮発性硫化物である硫化水素やメチルメルカプタン、ジメチルサルファイドなどの臭気物質が発生すると考えられています。

【口臭の治療】
◆ う歯や歯周病の治療、口腔内の十分な清掃を指導します。
(当院では、先端理学美容機器WAVEducerを使用したスマイルオーラルリラクゼーションとして、50ミクロンブラシと音響振動による歯面、歯肉、舌苔へのブラッシングを行うオーラルバイブロクリーニングを導入して、口臭の除去については、患者さんに満足いただける成果を上げています。) 現在はILUXI(アイラクシー)を使用中です。
 プラークコントロールができていないと口腔内細菌により分解されてできた(揮発性硫化物質等)が発生し口臭となる。舌苔も、歯石・プラークと同様に細菌の固まりで臭気物質(揮発性硫化物)を生成します。
◆ 慢性副鼻腔炎による後鼻漏による口臭や鼻閉による口呼吸のために口の中が乾燥することによることもあり、本人は鼻づまりで臭いを感じにくいこともあります。
◆ 慢性扁桃炎で陰窩膿栓が多く見られる場合もしばしば口臭の原因となります。
口腔乾燥症では唾液による希釈や循環が弱まることにより口臭の原因となります。また、重症のむし歯や歯周病を併発する事が多く認められます。
◆ 老化や心因性以外に、甲状腺機能亢進症、糖尿病、自己免疫疾患、鉄欠乏性貧血、悪性貧血,薬物による副作用などが原因と考えられています。
◆ 特殊なものでは、魚臭症候群(fish odor syndrome)という常染色体劣性遺伝による先天性代謝異常では魚臭が残るたんぱく質のトリメチルアミンを無臭の副産物に転換する消化酵素である転換酵素遺伝子が欠けているため、肝臓におけるトリメチルアミンの酸化能の欠除によって体内に蓄積されるのであろうと推測されており、呼気時に魚の臭いを感じます。また,イソ吉草酸欠症では呼気,尿,汗などに汗臭い靴下のような臭いをひき起こすことがあります。
◆ その他、人間には誰にでもお口のにおいはあるもので、生理的口臭とされています。たとえば、起床時口臭(眠っている間は、唾液の分泌量と環流が減少するために口中の細菌が増えることにより起きたばかりでは一時的に口臭がある)、緊張時口臭(長時間緊張し続けている時に感じられる)加齢的老人性口臭(唾液の分泌量が減ため粘液性となる)、飲酒によるアルコール臭,食物による口臭もこれに含まれます。タバコの常習者(ニコチン、タールが呼気に含まれること、また胃があれることによる独特の体臭の原因になる)、ニンニク、葱,ビタミン剤(アリナミンなど)の栄養剤や薬品による臭いの強い食品を摂取すると消化吸収され血中濃度があがると肺におけるガス交換でにおいが口臭としてみられるものでいずれ血中濃度が下がるとともに消失するが、偏った食生活の改善も必要となります。

【自臭症】
 これまでのべてきたものが、他者が認識できる口臭として定義されている真の意味での口臭症です。一方、口臭を訴えて病院を訪れる患者のなかで特に器質的変化、医学的所見がなく口腔内の清掃状態は平均的以上に良好で他覚的に口臭を認めないものがあり、自臭症といいます。実際には口臭を訴える患者群の80%が自臭症であると報告されています。自臭症とは身体のどこからか特有の臭いがでていて、周囲にいる他者に不快を与え、その結果として他者に蔑まれ忌避され、これは自分の体のどこかに一定の障害があるものだと確信するものと説明されています。男女比は1:2で女性に多く、年令分布では20才代と40才代と2峰性のピークを持っています。

【自臭症の分類】
 自臭症は、二つに大別され口臭神経症と口臭心身症があります。 口臭神経症は、几帳面であり自己中心的で勝ち気の人に多く、反面対人関係に不満葛藤を持ちやすく問題が生じるとその理由を口臭に求め、逃避するパターンで、口臭心身症では、内気で自分の意志を明確に表現することが苦手の人に多く口臭神経症の人とは逆に問題が生じると自分を責めるようになります。うつ病や分裂病に発展するものもあるので通常の身体的治療のみならず心身医学的アプローチが必要となるため,場合によっては精神科医へ協力を求めます。
 (日本口腔・咽頭科学学会HPから転載・加筆



口腔ケア

口腔ケア

【口腔ケアとは?】
  口腔ケアの定義は、狭義には、口腔衛生の改善のためのケア、すなわち口腔清掃を指すが、最近ではもう少し範囲を広げて、歯石の除去、義歯の手入れ、簡単な治療まで含められる事が多いようです。 さらに、摂食・咀嚼・嚥下訓練まで含められる場合もあります。 すなわち、「口腔ケアとは、口腔清掃、歯石の除去、義歯の調整・修理・手入れ、簡単な治療などにより口腔の疾病予防・機能回復、健康の保持増進、さらにQOLの向上を目指した技術である」といえます。 つまり、在宅で行いうる歯科処置のすべてが、口腔ケアといえると思われます。 もちろん、介護保険の給付範囲を越え、医療保険の範囲になる場合もありますが、制度上のことは口腔ケアの定義とは別問題です。  
【口腔ケアの目的】
 口腔ケアの目的としては、以下のことが挙げられます。
1)誤嚥性肺炎の予防
 この場合の誤嚥とは、食物の明らかな誤嚥ではなく、不顕性の誤嚥 ( silent aspiration )です。 嚥下反射・咳反射の低下した老人は、睡眠中(歯科診療の治療中もそうですが)に不顕性の誤嚥をたびたび起こし、この際,唾液とともに口腔内の細菌も同時に誤嚥するため、誤嚥性肺炎を起こしやすいといわれています。 従って、口腔内の細菌を減少させるためには、口腔ケアが極めて有効です。
 口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防に有効であるという事実は,最近,歯科医療関係者にも認知され始めた事実ですが、残念ながら、介護の現場ではほとんど認識されていないのが現状であろうと思われますが、介護を要する人の生命を脅かす誤嚥性肺炎の予防ということに関しては,QOLの向上とは次元を別にして論じられるべき重要なことであると思われます。
 そして,口腔ケアについての実践および啓蒙活動は,介護保険制度開始とともに,要介護人に接する機会が増すと思われる歯科医療従事者に課せられた重大な使命でありますので、現在、地区によっては、口腔保健センターなどから歯科医師、歯科衛生士を在宅訪問させ、積極的に口腔ケアを行っています。
 介護関係者の間では,介護を受けている人の口腔内は,「介護の鏡」といわれています。 このことは,言い換えれば,生命の危険に直接関係のないと思われた口腔ケアまでは,なかなか手が届かず,後まわしにされていたというのが現状であったように思われます。 しかし,今後は,口腔ケアは,とくに脳血管障害等で嚥下・咳反射の低下した要介護人にとっては,誤嚥性肺炎の予防という観点から,ケアプランの中に積極的に組み入れられる必要があるでしょう。
 * 誤嚥性肺炎の成立過程:脳血管障害 → 嚥下・咳反射低下 → 不顕性誤嚥 →(+免疫機能低下)→ 誤嚥性肺炎
2)口腔疾患の予防
 適切な口腔ケアが、各種口腔疾患の予防に有効なことは要介護人に限ったことではありません。健常者にとっても、大変、有効であることは言うまでもありません。
3)QOLの向上
 介護支援専門員標準テキストによれば,介護支援専門員の基本視点の一つとして,ノーマライゼーションとQOLを挙げています。 そして、生活の質(QOL : Quality of Life )を高めるという考え方は、高齢者にとって重要な価値基準であり、質の高い生活とは、自分の求めている暮らし方が現実のものとなる生活であり、そうした生活にこそ、満足があり、喜びがあり、笑顔のあるはずであるとしています。 口腔ケアの充実により、口から食べること、おいしく食べることがすべての要介護者の自立とQOLの向上に寄与することは、異論のないところであろうと思われます。

(口腔ケアについて考えるHPから引用・追加)



欠損補綴

 欠損補綴治療は、永久歯を失ってしまった場合の治療法です。不幸にして歯を失ってしまった歯を取り戻したい、でも、インプラントのような手術は怖いし、不安もある。そのような方に行う治療法として、最もポピュラーなものは、失われた歯の数が多い時に使用される義歯治療になります。
(失われた歯が少ない場合でも、健康な歯を削りたくないとお考えの方も同様です。)
「義歯」とは、簡単にいうと入れ歯のことであり、これにもいくつかの種類があります。
一方、失われた数が少ない時はブリッジ治療を行います。

【ブリッジ】
 ブリッジ治療とは、失った歯の隣接する歯を削って、橋げたを作り「橋」のように、歯のない部分に橋を架けるように人工の歯を入れ、歯と歯の間の欠損部分をつなぐものです。
健康保険の適用ができる治療となりますが、喪失歯の本数、支台歯となる残存歯等の状態や使用する材料など一定の制約の下での適用となりますので、保険診療で治療ができる場合と、そうでない場合があります。
 当院でも多くの症例を扱ってきたアドフィージョンブリッジ(接着性ブリッジ)は、前歯部(使用する材料が決められています。)を除いて、保険外診療(自由診療)となりますが、咬む面と隣接面(歯と歯との間の面)を少し削るだけで、歯のエナメル質と金属に強力に接着するセメントを使用するブリッジ治療です。しかし、歯軋り・くいしばりが強い場合、使用した接着セメントが劣化した場合、歯周病が進行して、歯牙の動揺が著しくなった場合は、ブリッジが脱離することもあり、イメージ的には、固定性ブリッジと入れ歯との中間に位置するものですが、「なるべく健康な歯は削りたくない」とお考えの患者さんには、お薦めです。

【義  歯】
 義歯治療の入れ歯には大きく分けて、歯が何本か残っている患者さん向けの部分入れ歯と歯がすべて失ってしまった患者さん向けの総入れ歯の二種類があります。
1)部分入れ歯(部分義歯)
 比較的多くの歯を失っている場合など、ブリッジ治療のできないケースでも対応できる治療法です。部分入れ歯は、歯を失った部分の型を取り、そこに人工の歯を入れます。歯の固定はバネで自分の歯に引っ掛ける仕組みになっています。こちらも健康保険の適用となる範囲の制約があります。
2)総入れ歯(総義歯)
 すべての歯を失ってしまった場合などに用いられる治療法です。一般的に皆様が「入れ歯」という言葉から想像するのは、この「総入れ歯」ではないでしょうか? 総義歯治療とは、その名のとおり全ての歯を人工の歯で補う治療法です。
 総義歯治療は大変困難な治療といえます。単純にお口に合うように型取(印象採得)して入れ歯を作り上げるだけでは、患者様が本当に満足できる良い総入れ歯は作れません。そのためには、しっかりとした治療計画を立て、情報収集のために精密な診査を行い、歯科技工士と共に、幾つかのステップを踏みながら、治療を進めていく必要があります。

【特殊な義歯】(自由診療)
 詳しくは、次項目の特殊精密義歯・特殊アタッチメント精密義歯をご参照下さい。
1)金属床義歯(自由診療・特定療養費制度あり)
2)ノンクラスプデンチャー(自由診療)
3)アタッチメント義歯(自由診療)

 ・磁性アタッチメント義歯
 ・コーヌスクローネアタッチメント義歯
 ・チャネルショルダーアタッチメント義歯
 ・スイングロックシステムアタッチメント義歯